「国際ファクトチェックデーに際しての記者発表」概要

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2019.04.11

「国際ファクトチェックデーに際しての記者発表」概要
2019年4月2日(火)16時00分〜17時30分
渋谷・道玄坂会見場

NPO法人ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)による会見

会見者
瀬川至朗(FIJ理事長、早稲田大学政治経済学術院教授)
楊井人文(FIJ理事兼事務局長、一般社団法人日本報道検証機構代表、弁護士)

瀬川 FIJ理事長を務めております瀬川と申します。よろしくお願いいたします。まず最初に私のほうから今日の「国際ファクトチェックデー(International Fact-checking Day/以下、IFCD)」について、ごく簡単にお話をいたします。

IFCDは2007年4月2日、最初に設けられました。ドナルド・トランプ氏が米国の大統領に就任した年のエイプリルフールの翌日に設定されたものだと思います。このエイプリルフールとIFCDの関係については記述がないのでわかりません。「恐らく」というところです。

これは国際ファクトチェックネットワーク(IFCN/本部:米国フロリダ州)が設けたものです。私たちを含め、世界のファクトチェック(以下、FC)関係者が集まっている組織です。

このIFCNはフロリダの著名な非営利のジャーナリスト学校であるポインター研究所の中に設けられた組織です。 英語では「International Fact-checking Day」と呼びます。日本語では「ファクトチェッキング」という言葉はあまりなじみがないということで、基本的には「ファクトチェックデー」という形で話を進めているところです。

この日に「事実」あるいは「FCの重要さ」を呼び掛けるというのがまず第一にあります。もう一つ、ジャーナリスト、ファクトチェッカー、教育者、市民などを対象に情報の真偽を見極めるためのコンテンツやツールをさまざまな組織が提供する日としてIFCDは設けられています。

IFCN自体も特別のウェブサイトでいろいろなものを用意しておりますし、各国の組織もさまざまな取り組みをしているところです。
その中でFIJとして初めてこのIFCDというものの取り組みを今回初めて実施するということです。
で、その中でまずコンテンツ。先ほど言いました情報の真偽を見極めるためのコンテンツを提供する特別サイトを作成しております。今日の発表の中にございます。

FIJとしては、現在の取り組みについてお話をする機会とさせていただきたいと思い、その両者を合わせて今日の記者会見とさせていただいております。
われわれとしましては、より多くのメディアにFCに参加していただきたいというのが一つあります。より多くの市民の方々にもFCに参加していただきたい。そうした方向で今回発表する取り組みを考えているところです。
詳細につきましては、この後、事務局長の楊井からお話をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

楊井 事務局長の楊井と申します。
今日はIFCDです。皆さん、あまりなじみがないかもしれませんけど、FCをより深く不理解してもらう機会ということで。今日はいろいろと発表させていただければと思っております。

まず最初に、FIJは2017年6月に設立された団体です。FCの活動というものを日本で普及していくために作られました。さまざまなジャーナリスト出身者や学識経験者、有識者の理事を招いて発足した団体です。

なぜ、FIJを作ったのかと言いますと、真偽不明な情報がネット上で拡散する時代になっているということ。海外でのFCはすでに盛んに行われているんですね。それに対して、日本ではまだまだ取り組みが限定的です。

特にFIJを作った17年当時はFCという言葉もまだあまり使われていなかった。「フェイクニュース」という言葉はすでに使われるようになっていたんですが、まだ「FCって何?」という感じでした。そういう状況をちょっとでも変えようと。

「ジャーナリズムやメディアがFCに取り組むことによって、より信頼性も高まるのではないか」ということで、資料にも掲げてあるように、誤報や虚報の拡散防止、ジャーナリズムの信頼性向上。もう一つ重要なのが、言論の自由の基盤の強化です。

きちんと事実に基づいて言論をしていくということがおろそかにされると、民主主義のよって立つ基盤、言論の基盤が揺らいでくる。あまりにも誤った情報が広がりすぎ、社会に悪影響を与えると、それを規制しなければならないのではないか。場合によっては、言論の自由の制限ということにもつながりかねないわけです。

そういった意味でFCを自主的に日本の中でも取り組みを広げていく必要があると考え、17年から始めました。皆さんの中にはご存じの方も多いと思いますが、同年には衆議院選挙のFCプロジェクトを日本で初めて複数のメディアと協働で実施しました。

そういった流れの中でようやくFCという言葉も少しずつ日本で使われるようになってきたという印象があります。今日はIFCDにおいてFIJとしていくつか取り組みを発表することにしました。
まず、特集サイトの公開。すでにこれは先ほど、お昼すぎに公開をいたしました。FIJのホームページにアクセスしていただければ、ドカンとバナーが貼ってあります。そちらをクリックしていただければ、特集サイトにつながります。(FIJのHP

今日お手元にお配りしているのは、そのサイトを印刷したものです。上から順に簡単にご説明いたします。
IFCNのほうで提供しているFCのコミックがあるんですね。これは去年のIFCDで公開されていたものです。ブラジルのFC団体が作成して、IFCNやその関連団体も協力して作られたものです。

これが非常に面白い。というか、若い人も含めて、こういった問題、まあ、硬いテーマではあると思うので。わかりやすく噛み砕いて理解するにはもってこいのコンテンツじゃないかと思っています。

実はすでに5カ国語ぐらいに訳されています。日本語版を作ろうということで、今回、FIJのスタッフで作成をしました。これは皆さんのお手元にマンガのほうもお配りしています。

二つ目は「ポリティファクト(以下、PF)」(政治にまつわる言論の真偽をFCする米国の団体、サイト)の記事を日本語で読むというもの。このコンテンツはFIJとも関係があります。去年の4月に「PF」の方をお招きし、設立シンポジウムを行っています。

「PF」は米国の最も有名なFC団体であり、ピューリッツァー賞も受賞している。ここに描かれている「PF」のメーターには「True」から「Mostly True」「Half True」「Mostly False」「False」「Pants on Fire」まで6種類があり、非常にその名を知られています。

「PF」の記事は正直言って長い。まあ、FCの記事はどれも非常に長いものです。われわれのように英語ができる者でも、頑張って読まないといけない。時間を作らないと、なかなかじっくり読めません。

では、海外で10年以上活動しているFC団体はどのようなFC記事を出しているのか。今日は2本だけですが、全訳したテキストを掲載いたしました。これも「PF」に了解を得て掲載しております。今日は印刷しておりませんが、サイトからぜひご覧になってください。

記事の一つは日本に関わりがあります。トランプ大統領の発言に関するものです。日本では自動車のテスト、ボウリングの球をバコンと車に落として安全性をテストしているんだと。こんなやり方では日米間の貿易不均衡はなかなか是正されない。ということで、トランプ氏が持ち出した発言をFCしているものです。

三つ目のコンテンツは、今、ご説明しました昨年4月に設立記念シンポジウムをした際、「PF」の方が行った基調講演です。これは実は会員向けに出していたものなんですが、もう1年経ちましたので、一般公開しました。これもお聞きになると、非常に示唆に富んでいると思います。全て日本語字幕をつけています。

四つ目は「政治家の主張をFCする10のステップ」。実際にFCするに当たって、どういうステップを踏めばいいのかが非常にわかりやすく書かれています。
ここにはものすごく大事なことがいろいろ書かれている。ぜひ本文をお読みいただきたい。これも邦訳しております。

政治家の主張のFCをする際、最も重要なことは言説についていろいろ指摘をする相手方の立場はどうなのかです。その政治家の裏には支持者がいる。FCをして、「これは言っていることが誤りだ」「ミスリードだ」と指摘するわけですが、その指摘の目的が政治家を攻撃することであってはならない。いかにその支持者に納得してもらえるようなFCを出せるかどうか。それにはいろいろな工夫が必要だということが書かれたコンテンツです。
ほかのコンテンツについては、後ほど説明をしながら、紹介したいと思います。

今日の特集サイトの公開と併せて発表させていただくことがいくつかございます。お手元にレジュメをお配りしております。
特集サイト公開に次ぐ二つ目として、FCC(疑義言説自動補足システム)の供用を開始します。これはAIでネット上の怪しげな情報をキャッチするシステム。スマートニュースと東北大学大学院乾・鈴木研究室の協力を得て開発しました。

このシステムがようやく業務に使える状況になってきましたので、これをメディアの方々に使ってもらおうということで、無償で利用アカウントの提供を始めております。これは「Fact-checking Consoleシステム」でFCCと略しております。今後ぜひ活用していただきたい。

それから三番目、FCのレーティング基準とガイドライン改訂版を策定いたししました。これは今日お配りした資料に「FC・ガイドライン」という4ページの資料があるかと思います。

この中の第4項という項目にレーティング基準がございます。FCを発表する際に、「これはミスリードだ」「誤りだ」と何らかの判定をするわけです。これはFCの一つの大きな特色です。その判定の基準をきちんと明確化しないといけない。恣意的にレーティング、判定をしてしまうと、それこそ読者や判定された本人から強い反発を受ける恐れがあります。

そういう意味で基準を明確化する必要があるということで、日本のメディアが共通で使いやすいFCの基準はないかと模索をして、検討した結果、今回のガイドラインに盛り込む形になりました。

四つ目がFIJは昨年暮れからメディアの記者の方々とレーティングをどうするのかということの非公式な検討会を続けてきました。今後、これを正式にメディアパートナーという形で参加を募集したいと。こう思っております。

FIJのメディアパートナーになると、何になるのかということなんですけども。FIJからは各社、各メディアのFC記事をどんどん紹介していく。先ほど少し説明しましたFCC、AIで疑義言説を収集するシステムを活用していただく。FIJのさまざまなイベントにも──これは原則、会員しか参加できません──メディアパートナーの方々を招待させていただく。

一方で、FIJでFC記事を紹介させていただくので、そのメディアのロゴを使わせていただきたい。今日発表しましたガイドラインを基本的に踏まえてFCをやっていただきたい。

ガイドラインだけじゃなく、IFCNの綱領もあります。今日はプリントアウトしていませんが、特集サイトにリンクを張って邦訳を載せています。そちらも踏まえ、信頼性が保証されたFCをしていただきたい。

そのFC記事をFIJで紹介させていただくに当たって、基本的にはリンクはそれぞれのデジタル版のサイトに掲載された記事にFIJからきちんと読者を誘導して記事を全文ご覧いただけるようにしたいと思っています。

その入り口となるFIJのサイトでは、まずどういうFC記事がその新聞社で発表されたのかという要約版、読者がパッと見て一目でわかるものをまず載せます。その上で「これの詳細記事をそれぞれのメディアで見てください」という形を取りたいと思っています。メディア各社には要約版を提供していただきたい。

あと、追って、正式な募集要項、文書は作成したいと思っています。今日はこういった概要になるということをご説明させていただきます。

それからもう一つ。FC講座を5月から開講する予定で準備しております。基本的にはメディア関係者、市民のどちらも参加、受講していただけるものにしたいと思っています。

ただ、やはり、FCは結局記事を発表して、世の中でそれを共有していかないと意味がないわけです。そういう意味では特に発信力のあるメディア関係者。FIJとしてはメディアにもっと積極的なFCをしていただきたいと思っておりますので、そういったメディア関係者、すでにジャーナリストとして一定の経験をお持ちの方に「FCの記事を出していくには、あと、どんなことが必要なのか」ということについて、この講座を通じてノウハウを提供させていただければと思っております。

最後に。こういった形でFIJの取り組みを今後もやっていきたいと思っているんですが。大きく分けて三つの取り組みを考えております。

今までやってきたことの整理なんですが、国内外のさまざまな世界を含めた動向の発信。メディアや市民とのコラボレーション、協働。テクノロジーによる支援。これらを通じて、FCの普及を進めていきたいと考えております。

この中で重要なことはメディアやジャーナリストもそうなんですけど、市民や学生、それからテクノロジー企業やエンジニア、大学、研究者、海外の関係団体。こうしたところの全てと業界の垣根を超えて協力関係を築いていく。これがFIJ設立以来のポリシーになっています。実際、この2年間、少しずつやってきました。

ようやくメディア関係者とのネットワークもできつつあります。これを今後も強化していきたいと考えております。
あとはざっと見ていただければと思うんですが。今回のIFCDには間に合いませんでしたが、サイトリニューアルを4月中、半ばに予定しております。サイトの全面的なリニューアルをして、さまざまな発信をよりしていきたいと思っております。

それから、今日、特集サイトのほうからリンクが張られておりますけど、「PF」記事の邦訳などを載せておりますポータルサイト。これはパイロット版なんですが、運用しております。これにはすでにいくつかのメディアのFC記事のリンクも張らせていただいております。

FC記事だけではなく、いろいろな海外の動きも含めた記事を収集して情報提供する。そんなポータルサイトを始めております。
年内にはFCアプリの開発も予定しております。

もう一つ、5月ぐらいから運用を予定しておりますのが、「クレームモニターシステム」というものです。先ほどのFCCシステムでは、まだいろいろな生のデータが混じり合った状態なんですね。この中から本当にFC可能な情報があるのかどうかは、また人の目で見ていかないといけない。人の目で一定のスクリーニングをして、よりFCに直接つながるような情報のみをデータベース化したもの。あるいはFCがなされた情報も含めてデータベース化したものをクレームモニターシステムと名付けて、この春から試験運用を始めたい。

これも先ほどのメディアパートナーの方々を中心に活用していただきたいと思っているものです。
少し話が長くなってしまいました。ほかにご質問もあるかと思いますので、今日のIFCDでの発表はこのへんで終わらせていただきます。ありがとうございました。

 

 

質疑応答

司会 これまでのお話と重複するところがあると思うんですけど。これまでFC機能が働いて、結果的に社会にとってプラスに働いたという事例ですね。FCの重要性ということを知らしめた事例ということでお話しいただけることがあれば、おうかがいしたい。

瀬川 これはまだFCというものが、一つ一つのものがどう効果があるかというのが検証されていないところがあるので、なかなかお答えしにくい。一方で、フェイクニュースのほうが拡散しやすく、FC記事のほうが拡散しにくいという問題もありますので。今言ったように、私もこれから研究していこうと思っているところなんですけども。

まあ、一つ、事例というか。今、こちらにおられると思うんですが。去年の沖縄県知事選挙において琉球新報と沖縄タイムスがFCの取り組みをされたと思うんですけども。まあ、その結果とはですね、私が仄聞している限りでは、それなりにフェイクの情報が最後の段階で収まったというか。「抑制できたんではないか」「抑制されたんではないか」という声も聞いておりますので。そういうものを今後、やはり検証する必要があると思っております。

先ほど言いましたように、フェイクニュースのほうがやはり拡散しやすい。そういう意味で「根治」、根本的な治療法にはなかなかなりません。ただ、むしろ、そういうFCをやっている試みが心理的なものも含めて影響を及ぼし、フェイクの発信が少なくなるということも考えられます。そういうところは今後研究していきたいと思っております。

司会 瀬川先生がどちらかのインタビューでFCを各メディアに求めると、メディア同士のある意味足の引っ張りあいと言いますか。なかなか「自分のことは棚に上げ」みたいなことが出てくるのか。「踏み込めないという空気があるんじゃないか」と。そういうインタビューを読んだ記憶があります。そのあたりを実際に今、メディアと付き合われて、メディアの空気感と言いますか。FCに対する積極性というのは、どうお感じになっていますか。

瀬川 メディア側の感覚には私が推測するに二つありまして。
一つはすでにファクトかどうかのチェックは日常的に記事の中でやっていると。そういう自負がまだ根強い。自分たちとしてはそういうことをやっているし。ニュースにしても、検証記事は日々書いている。
例えば、昨日(2019年4月1日)の元号の発表において、国書に頼ったということを言ったところを、ほかのいろんな取材を重ねて、実は中国の古典に依拠していた可能性もあるというようなことは記事に書くわけです。

そういうことで、「もう検証している」と言う人が多いですね。「だから、FCをあらためてやる必要はない」という感覚の人が多い。すでに自分たちの記事についてはきちんとやっているし。FCという言葉ではないし、手法ではないんだけども、検証記事は書いている。一つはこうした考えがあると思うんです。

ただ、これに関して言いますと、その書き方と、今のフェイクの問題をどうきちっと社会に提示していくかという問題は切り離して考えたほうがいいと私は思っています。

例えば、辺野古のサンゴの移植の話とかですね。あれは結局FCをやったのは、琉球新報さんでした。東京のメディアは朝日新聞にしても、毎日新聞にしても、しなかったと思うんですね。しなくて、書き方としては、「疑問の声が上がっている」とか。そういう書き方をむしろ政府サイドの記事として書いています。

ある意味それは抑える感覚。FCをきちっとやるというよりも、「政府の情報はそんなに間違ってないですよ」というニュアンスの記事です。そういう印象を結果的に与える記事になっている。

FCという視点できちっとやってみる。ということをやらないと、例えば、官邸の記者が書くと、そっち寄りの記事になったりとかですね。「こういう疑問があるけれども、実は政府はこういうことを考えている」というような記事に結果的になってしまったりするわけで。

一つはFCの専門記者を何人かは設けて。その人たちがまさに真偽不明の言説とかそういうのをFCという形でやって提示していく。ということが求められていると思うんですけど。なかなかそこに行ってもらえないのは、意識が変わらないのが一つと。もう一つはFC専門記者を置く余裕がないというのがよく言われることです。

そこの部分の両方がまだ足りてないのかな、と思うんですね。ただ、やはりそれは私、前の記事でもお話ししたんですけども。今、ジャーナリズム、あるいは既存メディアというか。

新聞とかテレビ、通信社というのはやはり、信頼性が問われているのは事実ですので。そこを自分たちの報道も含めて謙虚にFC、事実かどうかを検証していくことをむしろ宣言することによって、読者の信頼性は勝ち得るんではないかというのが、私からの呼び掛けであります。
より多くのメディアに参加していただきたいというふうに考えております。

フリーライター片田直久 FIJさんのご尽力もあって、FCの基本的な道具立て、環境が整いつつある状況であるかと思います。これから社会としてFC記事を当たり前に受け入れ、水準を上げていくプロセスとして、どういった働き掛けが必要なのか。海外の先進事例であるとか、お二人の理想も含めて、今後どういったステップがあるかうかがえればと思います。

楊井 今後、どういうステップを踏むかということだと思うんですけど。これは本当にもう一歩ずつ進めていくしかないと思うんですね。海外で盛んにFCが行われ、普及しているような状況にいきなり日本が到達するのはなかなか難しいでしょう。

そのステップバイステップの一つとして、例えばですけれども、一つは選挙というようなタイミングを捉えて、メディア同士でFCを行う。そういう機運を作ることが一つ。これはすでにFIJで一昨年の衆院選、そして昨年、沖縄県知事選でやってきました。今年も一応選挙が予定されておりますので。そういったタイミングでFCの協力体制を作るのが一つかなと思っております。

1社だけが飛び抜けてやると、どうしても目立ってしまうので。複数のメディアがFCをやるというと、ほかの社もまた乗りやすく、やりやすくなってくる。そういった環境を作っていくことが大事かなと思っています。
もう一つ、「FCの専門記者を置くべきだ」というのは僕も全く同じ考えなんですが、こればっかりはそれぞれの企業、メディアの経営判断ということで。それを見守るしかないわけですけども。

FIJとしてできるのは今日発表させていただいたいろいろな施策をしていくこと。メディアはFCにおける重要な主体です。ここで言うメディアとは、大手も含めて社会的に非常に発信力を持っている媒体ということになります。そういったところがFCをするか、しないかは大きな違いが出てくるので。われわれとしても重視しております。

そこだけではなく、市民や学生、あるいはテクノロジー企業を含めたさまざまな関係者にFCにもっともっと関わってもらう。それを今後も進めていきたいと思っています。

先ほど、あまりお話ができませんでしたけども、すでに市民や学生の方々にもFCに参加してもらうということを以前の衆院選のプロジェクトなどでもやっていました。今後は「選挙があるから」というのではなく、継続的に関わってもらうような形を取ろうと思っています。

2〜3月がちょうど大学の春休み期間だったので、10人弱ぐらいの学生さんがインターンやボランティアという形で参加してくださいました。いろいろな怪しい情報をチェックして、メディアのほうにもそういう情報を提供していく。そういうことをスタートしました。

これは今年の2月からなんですけども、こういうことを今後も継続的に。選挙のような大きなタイミングも大事なんですけど、それがあるなしに関わらずやっていきたい。そういった大きなイベントがあるときには、メディアにも参加してもらって、FCを昨年より少しでも多くのメディアに参加していただける形に持っていきたいと思っています。

バズフィード レーティングの件ですけども。日本では初めてこうしたレーティングが定められたと言ってしまって大丈夫なのかという点と。これをどういうふうに普及させていくかと、なぜこのレーティングに沿ったほうがいいのかというところの理由づけをもう一度うかがってもよろしいでしょうか。

楊井 まずは私のほうから。
「初めて」かというとですね。まあ、FIJとしてはもちろん初めてです。今までは正確に言えば、FCをしたことのあるメディアが自主的に社内でレーティング基準を作ってきました。

例えば、「ニュースのタネ」。FIJの立岩陽一郎理事が主宰するNPOですけれども。そこでニュースのタネ独自の閻魔大王というキャラクターを使ったレーティング基準を作った。その基準に基づいてFCをすることはこれまでもあったので。全く初めてかというと、そうではないかもしれません。

こういったメディアの方々全てに使ってもらえるようなレーティング基準を作るという意味では、初めてかと思います。
それをどうやって使ってもらうか。これはやはり、実際に使ってもらうに当たっては、メディアの方々のいろいろなご理解も必要だと思っています。強制するものでも何でもありませんので。あくまでガイドラインということで。これを参考にして使ってもらいたいということです。

なぜ、こういうレーティングの基準を作ったかといえば、先ほども申し上げたように、非常にキャッチーというか。読者にわかりやすいから、「ミスリード」「誤り」などの判定をするのがFCでは主流になっているんですね。

ただ、わかりやすさとキャッチーさはあるんですが、一方でリスクもある。リスクとは先ほど申し上げたように、はっきりした基準がないと、記者がそれぞれ場当たり的に「これはミスリード」と言ってみたり、「これは誤り」と言ってみたり、あるいは「これはフェイク」という表現を使ってみたり。いろいろ、バラバラになると思うんですね。

しかも、それがそれぞれのFC団体のやり方でやっていくとなると、読者も非常に混乱するんじゃないか。「どういう基準でやっているんですか?」と、FCに対する不信感みたいなものが出てきかねません。

そういう意味で、少しでも透明性を持って、「こういう基準、定義に基づいて当てはめているんですよ」ということを読者というか、一般の方々に説明していく。そういうこと自体が重要だと思います。

この基準そのものが優れているかどうかについては、これが最終形ではないと思っています。実際に使いながら、やはり、「この定義ではおかしいんじゃないか」とか、「もう少し判定の文言を日本語の読者にとってわかりやすいものに変えたほうがいいんじゃないか」とか。いろいろ出てくる可能性が十分にあります。そこはまたやりながら修正していく。それが前提のガイドラインということです。

そういう意味でもメディアの方に実際に使ってもらいながら、フィードバックをしてもらいながら、よりよい、読者にとっても、メディアにとってもわかりやすい基準作りをしていくのが意義だと考えております。

瀬川 少し補足をさせていただきます。これまでのレーティング、判定はそれぞれのメディアがそれぞれに考えてやっていた。例えば、朝日新聞は「○」「△」「×」という形。バズフィードはまたバズフィードで。私も大学で、ゼミでこういうFCをやっているとき、基準を作ってやっているんですけど。それぞれが作っていたと。

それぞれが作ってやっているということは、それぞれ違う形で出ていくわけで。受け手にとっては、「FCにはいろいろなものがあって、よくわからない」ということになる。

今回はプロセスとしては、FCをやってこられた方が集まって。メディアパートナーズ会議というのをやって、何回か協議、議論したわけです。議論の中で、これが一番、現時点ではFCをするときに、説明もしっかりできるし、根拠を持ってレーティングできるという基準を作ったということです。

そういう意味では、FIJがFCをやってこられたメディアの参加を得て、協議して、推奨できる統一的なガイドライン、レーティング基準を作ったというのが味噌でして。これは推奨したいということであります。

で、何が違うか。一般的には、「正確」「不正確」「半分正確」「間違い」「ほぼ間違い」とかですね。「正確さ」だけを軸にやるレーティングというのは世界的にもあるんです。ただ、見ていただくとわかるように、ここには「ミスリード」「根拠不明」あるいは「虚偽」とか、ちょっと違うものが入っています。バズフィードさんなんかはこれに近いものを入れています。

ただ、世界には二つの流れというか、タイプがあって。単に「正確」から「誤り」までのメーターでやっているものと、それだけじゃなく、それプラス、今言った「ミスリード」とか「虚偽」「判定保留」とか、そういうものを入れていくレーティングの仕方もあります。

今回は協議した結果、単にメーターだけではなかなか今ある言説をFCする、判定するときにちょっと足りないということがあって、いろいろなものを入れたというところがあります。

そういう意味で使いやすいものを考えたということです。これを基に今後さらに不備なところがあれば、変えていきたい。ですから、推奨のレーティングとしては初めて出したので、多くの人にこれを基に使っていただきたい。
それによって、より透明性とか公開性とかクリアになるのではないかと期待しているというところです。

琉球新報 今年は参議院選挙がある。参院選でのFC協働プロジェクトはやる予定だということはどこまで確定的に言えるんでしょうか。もし、それがある程度固まっているのであれば、「参院選でもやられるんだ」と記事に書ければ書きたい。

二点でいいですか。実際にFCをやっている側からの部分で。先ほどのレーティング、FCしたあとの評価の部分ですけど。FCCで言説を選ぶんですけど。それを全部やれるかというと、また、それも物理的にどうなのか。じゃあ、その中からどう選ぶのか。対象言説の選び方の恣意性というか。そこのところをどうお考えかなというところを現時点でお聞かせいただければ。

楊井 まず、私から。
質問の一つ目は参院選。それはFIJとしては、当然、参院選におけるFCを奨励していく立場です。それは実施をしていくということですね。

ただ、今まで衆院選と沖縄県知事選という大きなタイミングで集中的なプロジェクトをやった。それ以外では、特段やってこなかった部分があります。

今年からそうではなくて、参院選はもちろん重要なFCをすべき期間なので、力を入れてやっていくことになる。それだけに限らず、平時からやっていくという態勢にしていきたい。その中の挑戦として参院選もやっていくというふうにご理解いただければと思っています。

二つ目が対象言説の選択の問題もすごく重要な問題だと思います。それについては、まだ明確に選択の基準を作れていない。例えば、海外のFC団体では、「社会に重大な影響を与えるもの」であるとか、そういった指標を設けています。では、個別の記事をFCして発表する際に選択した理由を明らかにしているかというと、そこまではしていないと思う。していないけれども、じゃあ、読者から見て、それはどうなんだと。
なぜ、あれを選んで、これを選んでいないんだと。なぜ、これのFCはして、あれのFCはしていないんだと。

そういった疑問は当然出てき得るものだと思っています。そうしたところにどうやって説明していくのか。結局、説明の仕方とか、基準が作れるんだったら、基準の作り方ということになってくると思います。これは研究をしていかないといけないテーマだと思います。
ぜひ、それも含めて、メディアパートナーズ会議においても議題にしていきたい。

瀬川 二つ目のどう選択するかについては、海外でも議論があるところで。これはなかなか難しい問題ですね。
公正さということが重要だと思うんです。その公正さというのが、例えば、二人の候補がいたら、単に二人の候補の関係する言説を平等に、イーブンに取り上げてやるのか。ということが一つ。

例えば、FCCで出てくる疑義言説が8対2であるとすれば、8対2の割合でやっていく。そういう考え方も公正さと言えると思います。

単に今の選挙報道の中で、A候補は1本、B候補は1本という、その単純な公平さ、等しさでやるべきだというのはあると思う。そこがどういう形でやれるかというのは、今言ったようなことは一つの考え方としては。まあ、疑義言説が出ているほうはより多く取り上げてもいいんじゃないかということは考えられると思います。そういうものをどうやって数量化できるかは今後の課題だと思います。

参院選もこれまでと同様にプロジェクトをやると思う。日本での取り組みを大きくしていくきっかけが衆院選だったり、沖縄県知事選だったりするわけです。

最初の衆院選ではバズフィードさんというネットメディアでは非常に著名なところが入ってきて、やっていただいた。沖縄県知事選では琉球新報という地元の新聞メディアが参加していただいた。それによって浸透度はどんどん、ステップが変わってきていると思う。

今回、参院選でどういうステップができるかわかりませんけど、やはり大きなメディア、著名なメディアが参加することによってステップは変わっていくと思っています。そういうことを今後もいろいろなステップで考えていきたい。
実際にパートナーズ会議にはいくつかの大手メディアの方も来られたりしてますし。関心は持っていただいているんですけど、個人の関心が社全体にまだ広がっていないという面があるので、そのあたりを考えていきたい。

楊井 若干補足をします。
メディアパートナーズ会議にはいろいろな方々に参加していただいています。その中で新聞労連さんは──委員長は南彰さんという朝日新聞出身の方ですけども──新聞労連としてFIJのメディアパートナーズ会議に積極的に参加しています。

基準作りもそうですし、FCの普及に向けて新聞労連として関わっていくということは団体としての考えを示されているようです。今後、そこは非常に大きな重要な役割を担っていただける可能性はあるかと思っています。

岡崎 FCは事実に関して検証するわけですから、事実の検証自体が価値判断を下していくことだと思います。そしたら、そのことが名誉毀損だったり、時に炎上したりとかいうことが起き得る。

そういうことは過去の海外の事例であるのか。日本でもこの団体として想定されて、何か備えをされたりしているのか。ということがまず一つです。ほかにも聞きたいのがありますが、取り敢えず。

瀬川 ご指摘のように、特にレーティングも含めて、一つの判断、評価を下しているわけです。それをめぐって、いろいろな論争、あるいは反論も実際に起き得ることではあります。

結局は名誉毀損などは法的にきちんと、それはほかの表現活動と同じようにFCもそういった事実を踏まえてするということに尽きるわけですけども。これもほかのメディアというか、ジャーナリズムの一般の活動と、本当は本質は変わらないんですが、特にFCにおいては、FC自身も誤りが起き得るという前提をきちんと持たなければなりません。

そして、FCに評価や事実関係などの誤りがあれば、きちんと明確に訂正する。それは通常の報道であっても、当たり前のことだと思います。本来は。ただ、FCの業界というか、FCをしている関係者の中ではこれは特に強く意識されているテーマの一つです。IFCNの原則の中にも、それが一つ大きな項目として、われわれは大きな誤りが起き得るから、きちんと訂正をしなければならないということは謳っています。

FCも完全無欠ではない。そうしたところをFCをする人たちも、頭に入れて。そういう意味では、ある種の謙虚さというか。過度に批判的、攻撃的になるのではなくて。なるべく、ある意味抑制的に、冷静にやっていくことが重要だと思います。

片田 先ほど、楊井事務局長のお話の中で、ガイドラインの策定に当たって、「模索」「検討」という言葉がありました。実際に作っていく中で、委員会で議論が分かれた点、ご苦労なさった点、配慮なさった点。どういったものがあるのか、あらためてうかがえますでしょうか。

楊井 今回、特にレーティング基準を作るということで。これは実際、FCを今までもやって発表してきたメディアの方も議論に加わっていただいてやりましたので。当然、いろいろな意見がありました。それを集約するのに、結果的には3カ月あまり費やしているかと思います。

その中で、いろんな意見がある中で、先ほど、どうやって対象言説、FCすべき情報なり言説を選ぶ基準ですね。これを明確にするのかというのが難しい部分ではあります。

その中で、このレーティングの中に「重大であるかどうか」、つまり、このFCの対象となる言説が社会に悪影響なり、危険性なりを及ぼす可能性が高いのかどうか。あるいはそれほど高くない、低いものもあるかもしれません。そういう意味で、影響の有無や大きさを何らかの形でこのレーティングにも盛り込むべきかどうかという議論はありました。

ただ、やはり、それは先ほどの話の繰り返しになりますが、なかなか明確な基準をスパッと作れるものではないので。逆にそういうものを盛り込んでしまうと、主観的な要素が強くなってしまう。やめるべきだろうということで。

基本的には正確性の基準で判断していくと。その中において、FCをやっている人はこれは誰でも気づくことなんですけども。100パーセント事実かどうか確証が取れるものももちろんありますが、そうじゃないものも世の中にはたくさんあるわけですね。明らかに「言ったもん勝ち」で。何も根拠がないのに、「言ったもん勝ち」。

でも、それが「そうじゃない」「事実じゃない」ということを証明しようとすると、「悪魔の証明」みたいになって。それが事実でないという決定的な証拠を見つけるのも難しい。

じゃあ、そういう場合にどうするのか。そういうFCの難しさがあります。悪魔の証明はもちろんできないけども、その主張なり、事実があるという情報を支える証拠や根拠が非常に乏しい場合、それを「根拠不明」という形でレーティングすることを今回盛り込みました。

ただ、これについてもいろいろ意見がありました(苦笑)。「根拠不明」という四字熟語を出した場合、読者がどう受け止めるのか。本来はこれは「言ったもん勝ち」。根拠のないことを言っている。だから、「限りなく事実ではない」「虚偽に近い」というケースを想定はしているんですね。でも、「虚偽だ」「誤りだ」とも証明はできないわけです。

その場合、どういうふうに言うのか。端的に読者に「そういう事案なんですよ」ということを伝えるには、どういう表現がいいのかということです。
「『根拠不明』という言葉は果たしてそれでいいのか?」という意見もありました。最終的には「根拠不明」ということで、今回は決めたんですけども。そういう表現の難しさがありました。今後もこれは実践をしながら、場合によっては修正していきたいと思っています。

瀬川 一つ苦労した点としては、米国の「PF」とか韓国の「ソウルファクトチェックセンター」のように、いろいろなメディアが参加してやっている団体の基準はどちらかというと、メーターで。「正確」から「誤り」だけで、「ミスリード」とか「根拠不明」などはありません。そういうのをどうするのかというのが最初の論点。それについては、「やはり入れたほうがいい」ということで。

楊井 訂正があります。FCをしても、間違えるんです。

会場 (笑)。

瀬川 そういう問題じゃない(笑)。

楊井 そういう問題じゃない。大変失礼いたしました。
ちょっと今、気づいたんですけど、レーティングの基準が1個抜け落ちたというか、改行が変になっているものがありまして。

「ほぼ正確」の次に、この行の中に「不正確」というのが真ん中へんに出てくる。その「不正確」というのが、もう一つレーティングとして出てくるんですね。
その後ろの「正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している」という定義になっていますけど。

あらためて確認すると、「正確」「ほぼ正確」「不正確」。ここまでは正確性が判断されているわけですけど。そして、「ミスリード」。ミスリードというのは、重要な事実が欠落しているとか、釣り見出しであるとか。それ自体誤りとは言えないんだけど、非常に誤解の余地が大きいケースをミスリード。そして、「根拠不明」「誤り」「虚偽」。あとは「判定留保」「検証対象外」。全部で9つですね。9つのレーティングになっておりますので。申し訳ありません。これは訂正させていただきます。

瀬川 この「不正確」というのが、実はいろいろ議論になりまして。まあ、この場合は「不正確」と「誤り」を分けているんですね。
「不正確」は「ほぼ誤り」とか「半分誤り」とか。そういうものが「不正確」というものとして設定したわけです。メーターでいうと、より赤に近い。「誤り」に近いものとして「不正確」を置いている。

これについては議論もありました。「『不正確』は英語で言うと、『正しくない』。となると、『誤り」とほぼ同じだ」と。そういう考え方もあるんですね。ただ、議論をする中では、「日本語の『不正確』は『誤り』とは違う」という意見が多くて。それは「『正確』ではなない」、あるいは「『ほぼ正確』ではない」というところに「不正確」を置いたというのが一つの、日本語としての置き方として置いたということが今回の特徴です。

これについては議論もあるので、「これを英語にどう訳すのか?」というときに、そのまま訳せるかというと、ちょっと難しい。これはこれからの議論なんですけど。

今、置いているのは、メーター的には『正確』『ほぼ正確』『不正確』『誤り』というような形で置いているということです。

司会 手元に配られた資料はホームページに出ている表記と一緒ということですか。

瀬川 そうです。

司会 ホームページのほうはこれから?

楊井 訂正いたします。すみません。
今日、最終的に確定したもので。ちょっとバタバタしちゃいました。すみません。

NHK三浦 もう少し、どういったテーマを選んで、それにどういう評価を与えるかというのをもうちょっとうかがいたいんですけども。

例えば、先ほどおっしゃられた「令和が国書からと言えるのか」とか、「漢詩があるのか」とか。こういった評価って、個々人によってあまりにも違いすぎると思うんですね。「『万葉集』から取ったには違いないんだから、それは国書から取ったでいいんだ」という判断も恐らく成り立つわけですし。

あと、最近話題になったもので言えば、統計不正問題の特別監察委員会の報告で「あれは隠蔽ではなかった」という評価について。誰が見てもおかしいと言えば、おかしいんですけど。じゃあ、それがレーティングのどの位置に位置付けられるかというのは非常に価値判断が分かれると思うんですが。

このFIJに各社、あるいは各フリーランスの方が緩やかな連帯ということで入って。FC活動を行なっていく上で、そこで何を選んで、どういう評価をするかというのは、それはもう各社の判断? あるいは個々のジャーナリストの判断にしか多分ならない。「FIJ加盟会員で議論してきた一つのものです」というふうには多分ならないと思うんですけども。

そのあたりの各社がそういったチェックを記事に、あるいは放送に出したあとの、「これでよかったんだろうか」「これは妥当だったんだろうか」という事後的な検証ですとか、議論とかは定期的に行われるのか。それとも、まあ、それはそれで各社が、各ジャーナリストが下した判断ということで、それに対してFIJはよほど重大な誤りがない限りはどうという判断はしないというスタンスを取られるのか。そのあたり、お考えをお聞かせいただけますでしょうか。

楊井 今おっしゃったのは事後的な検証ですよね。FIJとして、「それがいい」「悪い」っていうような、何か公式にそれを。「FC記事をFCする」みたいなことをやる予定はありません。基本的にこのガイドラインに則って、あとは編集権。それぞれのメディアの編集判断。それぞれのメディアのFC担当者の判断でやっていただくもんだと考えています。

ただ、それがよかったのかどうか。例えば、発表後にそれに対して何か批判が巻き起こったりすることもあると思います。そういったケースについて、このメディアパートナーズ会議という場を使って、「それはどうだったんだろうか」という議論をするような機会はきちんと設けていきたいと思っています。

ただ、それを対外的に、「検証の結果、それは正しい」「誤り」とかね。そういうようなことをする予定はありません。明らかに事実誤認とか、FC記事の中に誤りがあるようなケースは別ですけれども。そうでない限りは基本的にガイドラインに則ってやっていただくのを尊重していく。そういうスタンスでございます。

瀬川 先ほどお話しした国書の問題は確かにかなり難しい。FCするのには難しい問題だと思うんですね。
世の中の多くの言説はFCするときには、判定を出すとか含めて難しいケースが多いと思います。ただ、一方で、かなり明らかなものもありますので。

私の考えでもあるし、実際に行われているものの中にはそういうものが多いと思うんですけど。まあ、ある意味、もともと事実ということで言ってますので。事実として明らかなことをFCの対象にして。それが真偽、正しいかどうかというのをやっていくのが基本だと思っていますので。そんな難しいことを最初からやらなくちゃいけないということではなくて。むしろ事実というところでいろいろ間違ったり、フェイクだったり。そういう話が結構あると私は思っています。そっちをまず中心的にやっていくのが重要だと思っています。

ですから、先ほど、検証記事ということを言いましたが、そういうものは検証記事でやっていくほうが適している。そういうものも世の中には多い。
ということが一つと。FIJとしてどうのというよりも、FCというのはもともとがやった上で公開性とか透明性とかですね。訂正をしているときの公開性というのは非常に重要なので。

そういうところをきちんとFIJとしても、それぞれのメディアのFCに対しては、誤っていると思われた場合は適切に対応して。かつオープンにすべきだというのが姿勢としてこちらが望む、望むというか、対応してくださいねというか、そういうことを推奨する。圧力ではなくてですね。

そういう形でFCというものを透明にずっとやっていくということが重要になると思っています。
FCというのは本当に。私も学生にやってもらったりして。やる側は大変なんですね。責任というか、これを出して、どういう反応があるかというのは。一般の記事以上に、厳しさというか。あるので。そこの部分は、もし間違えた場合はしっかりと訂正する。間違えないように、ギリギリまで頑張る。そういうことを含めて、やっていくのがFCの営みだということです。

バズフィード フェイクニュースという言葉のほうがFCという言葉より今、一般化している。フェイクニュースの中にもグラデーションがあって。まさに今回のレーティングはそういうことを意味しているかと思うんですが。
FCという言葉をいかに浸透させていくかということを、フェイクニュースという言葉との関係性とともにうかがえればと思います。

瀬川 ちょっと調べたことがあるんですけど。グーグルトレンドで「FC」と「フェイクニュース」というのを調べたら、確かに後者のほうが高いですね。

ただ、米国は「FC」も高かった。ちょっとこれはうろ覚えになっちゃうんですけど。日本は確かに「フェイクニュース」のほうが。まあ、全体としては高かったというのは事実です。

フェイクニュースのほうが世の中に浸透しているというのはあると思います。ただ、これはですね、しょうがないというかですね。人間というものの心理として意外なものであったり、「えっ」と思うことのほうが目を惹くわけで。そこは心理としてあると思う。

フィクションとして認められているものも確かにあります。ただ、われわれとしては、事実として語らなければならないものをフェイクという形で拡散していくものに対して、ファクトを提示する。こうして地道に変えていく以外にないと思うんですね。

ただし、これは琉球新報さんの例を挙げさせていただきますけども、去年の沖縄県知事選で私は琉球新報さんのサイトを見てまして。そのときに思ったのは、FCの記事はよく読まれていると。要するにランキングの上のほうにずっとあるんですね。ですので、一般的な政治とか選挙のニュースよりもFCの記事のほうが上のほうにあったんです。
ですから、さっきも言いましたように、フェイクニュースよりもFCのほうが拡散は少ないというのは一方で研究としてある。

また一方では、今言ったように、一般の選挙記事よりもFC記事のほうがよく読まれるということもあるので。むしろ、既存のメディアがネットで展開しているときに、FCは一つの売りになるんじゃないかというのが私の印象です。多分、琉球新報さんはそういうことも考えて今ずっとやられている部分があると思うんですけど。
それほど将来が明るくないということはないと思っています。FC記事も一般の記事よりは読まれると思っています。

楊井 質問の趣旨なんですけども、言葉の問題をお聞きになったのかなという気もしたですが。そうですか?

バズフィード そうです。

楊井 それはFIJとして何か統一的な見解があるわけではないので。理事の中でもフェイクニュースという言葉をよく使う人もいれば、そうでない人もいます。

ご案内のように、海外でフェイクニュースという言葉が非常に盛んに使われるようになった一つの大きな要因はトランプ大統領がメディアを攻撃するために使う文言として、あれだけツイッターでも使って。そして、メディアでも報じられるわけですから。それで伝播したところもあると思うんですね。

FCの関係者もそうですし。海外ではフェイクニュースという言葉は非常に曖昧であるということで。なるべく少なくともきちんと議論する場ではフェイクニュースという言葉は避けたほうがいいと。きちんと物事を整理して、違う表現で。今、何の議論をしているのかということを、きちんと言葉を定義づけてしていかないと、よくありませんと。そういったことはほぼ定着しているんじゃないかと思う。

一方で日本ではまだまだフェイクニュースという言葉が普通にいろいろな議論の中でも飛び交っているような気がします。で、いろいろなグラデーションが実際はあるということで。ただ、わかりやすい。フェイクニュースという言葉は非常にわかりやすいというのは私も理解できます。だから、メディアも使いたがるわけですよね。メディアとしても、フェイクニュースという言葉を使うと、読者に伝えやすい。

私はそういう段階をそろそろ卒業しないといけないんじゃないかと思っています。ある程度、社会で「こういう問題がある」ということを認識する上でフェイクニュースというキーワードは非常に有益でした。使い勝手がよかった面もある。それでも、この言葉には本質的な欠陥があります。

どういう欠陥か。いろいろなものが混じり込んでいるというだけではなくて、フェイクニュースという言葉を使うとき、相手を攻撃する意味合いが入ってきていると思うんです。

FCはそういうものではないということです。批判や攻撃、あるいは相手を貶めることを目的とするものではない。もちろん、デマを発信している人は批判されるべきだという考え方はそれはそれとしてあります。批判はあってもいいんですが、FCは別にそれを目的としているわけではないということです。

それを目的としだすと、「デマ潰し」「デマ叩き」ということで。FCする側も熱くなってしまいます。自戒を込めて言いますが、過剰な判定、表現になりがちです。

ですから、僕はフェイクニュースという言葉から卒業する時期にそろそろ来ていると思っていて。冷静に事実は何であるのか。あるいは検証可能な事実は何であって、先ほど元号の問題がありましたけど、「そもそもこれは事実の問題ではなくて、いろいろ学者の見解の問題ですね」という整理ができるかもしれません。そうすると、それはいろいろな見解があって、別にどれが正しい、間違いという判定をして、優劣をつける話ではないかもしれない。いろいろ議論はあってもいい。そういう話になると思うんです。

そういうふうに問題の整理をしていかないといけない。フェイクニュースという言葉が過剰に使われてきたきらいがあると思うので。シンプルな言葉かもしれませんが、ファクトという言葉をそろそろ大事にしていきたい。

逆に言えば、ファクトという言葉はオピニオンという言葉と区別されています。別にオピニオンを排撃するものでもない。それぞれの立場や意見はそれぞれで持っていていいと。ただ、それをフェイクというふうに安易にレッテルを貼って攻撃するのは、FCの目指すところから逆に離れていってしまう可能性が高い。

ガイドラインにも「フェイク」「フェイクニュース」という言葉は一切入っていません。そうしたものをメディア関係者やそれに関わる市民の方にも浸透させていければと考えています。

瀬川 ちょっと補足させてください。
フェイクニュースという言葉の定義はすごく広い。ニュースでない虚偽情報もフェイクニュースと言われたりします。
でも、一番狭い定義であるのは、ニュースレポートであると。ただし、それは意図的に間違ったり、事実と異なったり、ミスリーディングであったりする内容を発信したものである。そうした定義でありまして。これがフェイクニュースの正確な定義だと思うんですね。

ただ、今、世の中ではこれ以上にいろいろな意味でフェイクニュースという言葉が使われているので、その状況でこの言葉を使うのはよくない。

ただし、私自身は「フェイク」という言葉は別に使ってもいいと思っています。「フェイクな情報」とかですね。レーティングで言えば、「虚偽」。「虚偽」はフェイクと言えるんじゃないですかね。

楊井 まあ、そうですね。

瀬川 レーティングにある「虚偽」の定義は「全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である」。まあ、intentionally、つまりは意図的に事実でないことを知りながら伝えているというものであれば、フェイクと。定義的には言えると思うんですけど。

その言葉自体は決して使ってはいけないものだとは思いません。ただ、フェイクニュースという言葉自体はあまりにもいろいろな使われ方をして、定義もいろいろあったりして。かつ、もう一つはですね、いわゆる一般的なニュースも「フェイクニュース」と言われるので。フェイクニュースという言葉がどんどん浸透してくると、「ニュース=フェイク」という刷り込みが出ていくことがあると。

ただ、本当はフェイクニュースということで言われているものの多くは、一般的には偽情報であって。ニュースでフェイクというのはそれほどないんじゃないかというのが私の感覚です。

そこの中で言うと、フェイクニュースという言葉がどんどん浸透すると、トランプ大統領が意図するような。つまり、「ニュースはフェイクだ」という言葉につながっていく。だから、フェイクニュースという言葉自体はあまり、まあ、できるだけ使わないようにするのがいい。

岡崎 簡単な質問なんですけど。FIJではこれまで政策や政治家の言説を検証されてきていると思うんですけど、そうすると、公益性が高いことということを前提として、メディアの報道の検証とか、そういったものにも広げていって。そういうものを市民が持ち込んで、「こういうものを検証してほしい」とか。そういうものにも対応される予定はあるんでしょうか。

楊井 FCは今もご指摘のように、政治家なり公人の言説をチェックするところがウエートとしては非常に大きい。海外ではそこの部分が中心的に行われてきたんですね。その中にもちろんメディアの報道もFCの対象にはなり得ます。
FIJ自身がFC記事をFIJの名において発表することはしていません。基本的にはFIJのパートナーであるメディアにそれぞれの判断でFCをしてもらう。それをわれわれが後押しする形を取っております。

FIJとして「報道のFCをやりなさい」とか、「これをやりなさい」とか、そういうようなことはしません。ですが、幅広く政治家や公人のFCだけではなくて、それ以外のメディアの報道や有識者の発言、あるいはそうではない一般人で匿名の人かもしれないけど、社会に重大な影響を与えるようなSNS上の投稿も含めて、FCの対象にはなり得ると考えています。

その前提に立って、FCCとか、今後開発予定の「クレームモニターシステム」も、そういった種類の言説も収集して。例えば、「メディアの報道に誤りの疑いがある」という情報もわれわれは連携するメディアパートナーに提供していきたいと考えています。それによって検証していただきたい。そういう方向性は変わりません。

一般からの情報提供や「こういうものをFCしてほしい」という要望の受付もやっております。そうしたことも今後もっと推し進めて必ずできるとは限りませんけれども、「こういったFCの要望がある」ということも、メディアパートナーの中で共有して。できれば、やれるところは検証して記事にしてほしいということもFIJとしては呼び掛けていきたいと思っております。

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