「放送を語る会」記者会見「米朝首脳会談に対するテレビ報道の問題点」概要

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2018.11.07

2018年10月16日に行われた「放送を語る会」による記者会見「米朝首脳会談に対するテレビ報道の問題点」の概要は以下の通りです。

日時:2018年10月16日(火)15時00分〜16時00分
場所:渋谷・道玄坂会見場

登壇者:
今井潤(「放送を語る会」代表)
小滝一志(「放送を語る会」事務局長)
戸崎賢二(「放送を語る会」運営委員)
府川朝次(   〃     )

自己紹介

今井 他の方もそうですが、NHKのOBで。僕は主に「NHK特集」時代ですね。「Nスペ』と言うよりは「N特」。そのときに、主に報道番組で映像編集の仕事をしておりました。
 それで「放送を語る会」(以下、「会」)がどうして出来上がったのかということを後ほど話そうと思います。

小滝 「会」で事務局長をやっております小滝です。現役時代は教育番組のディレクターでしたけども。考えてみれば、定年から20年くらい。卒業後はほとんど「会」の仕事をやっておりました。後ほどモニター報告についても詳しく説明させていただきます。

戸崎 戸崎と申します。「会」の創立以来のメンバーで、NHKのOB。NHK時代はディレクターをしておりました。今日は前に座るとは思っていなかったので。代表と事務局長がモニター報告をやるというので、ちゃんとやるかどうか見に来ただけだったんですが(笑)。
 ただ、モニター報告書の最終的な取りまとめの作業に参加しましたので、そういう意味で今日は来てみようかということで参りました。

府川 府川と申します。私も現役時代はディレクターで。番組制作局の──戸崎さんも同じですけど──ディレクターをしておりました。「会」には初回の頃から関わってきました。
 戸崎さんと一緒に、今日は今井・小滝の両氏の進行ぶりを記者席で見ようと思っていたら、何か知らないけど、ここに祭り上げられちゃって戸惑ってるんですが。私もお答えできることがあれば、お話ししたいと思います。

モニター活動を始めたきっかけ

今井 その前に「会」がどうしてできたのかという話を簡単に。1989年の昭和天皇Xデー。NHKは全国各地からディレクター、記者、技術、カメラマン、相当な数を東京に召し上げて、大本営発表みたいな放送をしたんですね。ご存じじゃない方もいるかもしれませんが。それに対して、「いくら何でもこれはやり過ぎじゃないか」という声が上がって。で、もうちょっと勉強し直そうと市民に呼び掛けて、「会」ができたんですね。
 来年また天皇が代替わりするわけですけど。ちょうど30年前を思い出してますけど。
 そのあと、イラク戦争が始まりまして。 NHKの「ニュースセンター9時」(NHK。以下「NC9」)との「ニュースステーション」(テレビ朝日。以下「Nステ」)それから「NEWS23」(TBS。以下「23」)。「Nステ」は久米宏さんですね。それからTBSは筑紫哲也さんがやってらして。「Nステ」の視聴率がだいたい「NC9」の倍くらいあったんですね。久米さんが人気あったし。
 ということで、これをモニターしようということになった。今と違うのは、収録がSVHだったんです。今考えると、機械が古い。今はもう非常に便利になった。何でも使用できるようになっている。ところが、そうじゃなかったんで。収録してモニターすること自体が大変だった。だから、「NC9」と「Nステ」「23」しかできなかったんだね。
 2010年くらいからは機器がよくなってきて、だいぶ様相が変わってきました。対象の番組も多くなり、モニターを担当する人も増えた。先日の米中首脳会談では大阪、名古屋の人も参加するようになって、裾野が広がってきた。この点が最大の変化です。
 非常に有機的にモニター活動ができるようになったことは幸福だと思っています。市民活動として、やはり市民の立場からどう見えるかということは非常に大切ですから。それをテレビ局ないしはスタッフにフィードバックすることはこれもまた大事。そういうことでわれわれは活動を続けています。

小滝 モニター活動を始めたきっかけの一つで僕が記憶していることがあります。「会」では「放送フォーラム」という催しを隔月くらいのペースでずっとやっている。そこに吉岡忍さんがゲストで来られ、懇談会で「テレビ文化はなぜ軽佻浮薄か」という話になりました。「テレビには批評がない。批評が番組を育てる」という話を吉岡さんがされた。僕は非常にその言葉を記憶しています。振り返ってみると、イラク戦争やなんかが始まったときに、何か批評的なことができるんじゃないかということで「会」の人と話して、モニター活動を始めた。それが今の「会」の柱の一つになっているモニター活動の原点だったのかと思っています。

米朝会談のポイント

戸崎 モニター調査の結果内容は報告書を見ていただければわかると思います。非常に大きな変化が起こりつつあるのは事実だと思った。「報道特集」(TBS。以下「報特」)ではパラダイムシフトだっていうことをコメントで言ってました。結局、私たちの関心事はテレビニュースがいったいこの変化をどのように伝えるのか、という点にあった。見てみると、共同声明の文章が具体的でないとかいう報道がいっぱいだったんです。そういう点で言うと、私たちの関心事である大きな歴史的なうねりに対する報道関係者の見方が果たして十分なのかということがモニター活動の出発点でした。
 実際にモニターを2週間びっしり23人のメンバーがやりました。番組を記録して、それをお互いに共有するという作業をして。その集成から見えてきたものは、そういう大きな歴史的な変化に対する文言がやっぱり十分ではない。共同宣言の文言とか、あるいは北朝鮮に対する不信感や偏見に基づいた報道が結構多かったんじゃないか。そのことをちゃんと批判しようということが一つ、私たちの心の中にあって。そして、今、お配りしているような報告書になった。
 報告書の中身については、そこまで踏み込んで説明するつもりはありません。最初に挙げた「全体的な傾向」というところを見ていただければ、この間の2週間の報道の内容がわかっていただけるんじゃないか。
 恐らくこれからも米朝関係や北朝鮮をめぐる報道は続きますので、これで終わったわけではない。ここで私たちがまとめた内容はこれからも何らかの参考になると思っています。

府川 私は他のことに関わっておりまして、この藻にチター活動には参加していません。個人的に今回の日朝会談なんかを見ていて、今、各氏が言ったように、かなり表面的にしかものを見ていないという社が多かったんじゃないかと。その中でもきちんと歴史や背景に言及しているところもある。そういうものをきちんとわれわれは整理して、何が足りなかったのか、何をすべきだったのかということを示すことができれば、今後の取材活動などに参考になるんではないかということでまとめたと思う。

モニター調査で感じたテレビ報道の問題点

今井 私はNHKを担当しました。今回は調査担当者の数が非常に多かったため、デイリーだけではなく、本格的なウィークリーの調査も初めて行いました。
「羽鳥慎一モーニングショー」(テレ朝。以下「羽鳥MS」)なんかは大きなテーマでは今でも、非常に反政権。独自のスタンスで報道を堂々とやっている。テレ朝の報道局コメンテーター室解説委員である玉川徹さんや元共同通信記者の青木理さんが民放テレビの画面を通じて自説を堂々と述べるのはあっぱれと言える。当たり前と言えば当たり前だが、なかなか他局では聞けない。
 一方で昨日の松原耕二さんの「報道1930」(BS-TBS)。ここでは元外務官僚の田中均さんを呼んだんです。田中さんは安倍政権の北朝鮮外交は間違っていると明確に言いました。圧力一辺倒ではなく、あらゆるチャネルでやらなければ駄目だと。
 現在の日本の識者でも、田中さんの直言は際立っている。小泉純一郎政権で田中さんは拉致被害者の一部を帰国させる上で大きな働きをしました。その田中さんが現今の安倍政権の外交交渉は間違っていると一昨日、はっきり言ったんです。これには驚いた。
 米朝首脳会談報道でも、デイリーだけでなく、ウィークリーないしはデイリーでもワイドショー的な番組で出演者が独自の判断で政権に意を唱える発言をする点で著しい特徴があった。モニターをして発表する意味が相当あると。私は感じました。

小滝 米朝会談の報道について。お渡ししてある報告書の2ページ目に「米朝首脳会談報道の全体的傾向」ということで3つにまとめてあります。サマリーの2ページ目にも書いてあります。
 要点は歴史的な視点を欠いた報道になっていて、会談内容に終始している。もう一つは会談を否定的に見る傾向が強かった。これは一つの特徴だったと思います。
 二つ目は日本政府の平和構築への努力の不足とか、圧力一辺倒、拉致問題最優先といった政策に対する批判的視点が弱かった。日本政府の外交姿勢をきちんと批判する番組は本当に一部に限られていたと思えました。
 三つ目には、これは非常に世界的な大転換。いろいろな角度から多面的に問題を見つめる、あるいは視聴者にわかるように伝えていかなければならない。全般に動向をただ追いかけるだけで終わって、いろいろな見方という紹介の仕方が足りなかった。特にデイリーではそうです。週一のウィークリーの番組では、それなりに長い時間があるので、ある程度いろいろな見方が出てきていた。デイリーでは事実を追いかけるだけで、いろいろな見方があるということをきちんと伝えられていなかった。

戸崎 今回のモニター活動で感じたことは多々あります。一つ指摘しておきたいのは、今回の米朝会談報道ほど、伝える側、ニュース担当者の立ち位置、スタンドポイントが分かれたことはなかったんじゃないか。例えば、安保法制や共謀罪の国会審議に関する報道であれば、賛成派、反対派の識者が出てきて、それに国会の審議が絡んでくる。そういうスタイルの報道がだいたい主なものだった。
 米朝会談の場合、どの位置に立ってこれを報じるかということが割と明確に見えてきた。一つは米国、トランプ政権側からの視点に立つ報道。これは「今回の米朝会談がトランプ政権にとってはマイナスである」「米国ではあまり評価しない」「結局、金正恩にやられた」とか、そういうタイプの報道です。非常に多かった。トランプ政権側に立って、政権にとってプラスか、マイナスかで報道する。これが一つの傾向ですね。
 それからもう一つは、どちらかというと日本政府、安倍政権側に立つ報道もあった。番組名など具体的なことは報告書に書きました。例えば、「こんなにトランプが妥協して、『合同訓練もやめてしまう』といったことを言っていいのか。心配だ」という発言がキャスターの中にありました。これはNHKのキャスターもそうです。安倍政権の圧力を強めるという政策に影響を受けて、そういう意識がキャスターの中にも浸透してきている。「こんなに妥協していいのか」「日本政府が圧力を強めてきたことが無駄になるんではないか」という立ち位置。これが二つ目です。
 三つ目はこれとは対照的。もっと広く、例えば、韓国の民衆にとってこの会談はどうなのか、とか。そういう複眼的な。もう少し視野を広げた見方、視点での報道があった。これは「報道特集」(TBS。以下「報特」)や「羽鳥MS」「サンデーモーニング」(TBS。以下「SM」)なんかにもちらっとありましたけど。もっと広く見ていこうという視点。
 この3つくらいのニュースを伝える側の分かれ方というのが、今回の報道を見て、メンバーの報告を全て読んだ上で感じたことです。この分かれ方がこの先どうなっていくのか。今後の報道を見ていく上で注意しないといけない点だと思っています」

質疑

『サイゾー』揖斐憲 番組に偏向が生まれる背景が視聴者にはわからない。出演者個人の意見を表明しているだけなのか。キャスターやコメンテーターを含め、番組全体を「こういう方向で行こう」と指示があるのか。番組制作に携わった方々から見て、実際の報道の現場で番組から発せられるメッセージはどう決まって行くのでしょうか。

今井 想像で言うんですけど。僕がテレビを見る上での観点は簡単なんです。ゲストとして誰が出ているか、です。レギュラーは別です。ある特定の問題で、どういう専門家を呼んだか。これによって、その番組の性格がわかる。
 つまり、従来から国際情勢に批判的な目を持って見ている人を呼ぶ場合もある。そうではなくて、現状の政策に批判しない立場を取ってきた人を呼ぶ場合も、もちろんある。単に見ているんじゃなくて、誰を呼んだか。僕はいつもそれを見ている。
 例えば、NHKが日曜日に「日曜討論」という番組をやっている。これもゲストによって違う。無名だけど、現状の政権や政策の問題点を追及する人を呼ぶ場合もあるんです。
 だから、モニターは番組をよく見ていないといけない。
「羽鳥MS」は玉川氏と石原良純氏、玉川氏と青木氏の意見が対立することがある。予定調和というか、予測した言論の空間を準備していないという点でテレ朝は立派だと思う。

戸崎 この質問には答えられないんです。つまり、私たちがモニターした12番組。それぞれの放送、ニュースがどのように意思決定されて、内容が決まってるのか。これは到底わからない。申し訳ないんですが。

※モニター調査の対象となった番組
【デイリーニュース】
▽NHK
「ニュース7」「ニュースウオッチ9」
▽テレビ朝日
「報道ステーション」
▽TBS
「NEWS23」
▽日本テレビ
「NEWS ZERO」
▽フジテレビ
「プライムニュースα」
【デイリーの報道・情報番組】
▽テレビ朝日
「羽鳥慎一モーニングショー」
▽TBS
「ゴゴスマ」
【ウイークリーの報道・情報番組】
▽TBS
「報道特集」「サンデーモーニング」
▽フジテレビ
「Mr.サンデー」
▽日本テレビ
「真相報道バンキシャ!」

 多分、局によって結構違うと思います。「ニュースウオッチ9」(NHK。以下「NW9」)なんかの場合には、一番上に編集責任者。「NW9」チームの編集責任者がいる。その下にプロデューサーが何人か配置されていて。編集会議で「どういうニュースをやろうか」ということが決まって。各セクションから原稿が上がってきて、それをどのように配置するかと。
 そして、キャスターの前説、後説ですね。最初にどういうことを言うか、まとめをどう言うか。というようなことはチームで練り上げていく。「どういう編集方針で行くか」というようなことは外部に発表されないものですから。番組、ニュースの現実を見て判断するしかない。
 そういう点で言うと、今井さんが言ったように、コメンテーターとして誰を採用しているか。それからキャスターが何を言うか。そういったことで、そのニュースが持っている思想や傾向をわれわれ視聴者が判断するしかない。
 本当は今のご質問のような内容はオープンにされなくてはならない。でも、オープンにすることによって今度は報道自体が制約されることがあります。ですから、ある程度は秘密にする。視聴者がNHKに対して、クレームをつけてきたり、文句を言ったりしますが、編集方針に関しては一切答えません。マニュアルのように断っているので、そこを突破するのはなかなか難しいんですね。

フリーライター片田直久 2点うかがいたいと思います。
 2003年以降、モニター活動を続けておられる。トレンド、傾向として見た場合、日本のテレビ報道はどう変化しているのか。これが一点。
 もう一つはテレビ報道に、かつて輝いていた時代はあったのか。あったとすれば、いつなのか。それがどこかの転換点を経て現在のようになった。とすれば、転換点はどこにあるのか。以上です。

小滝 大きな流れの傾向はそんなにはっきりつかめるものではありません。僕らがモニターを始めて以降はNHKをはじめとする政権寄りの報道。それから「報道ステーション」(テレ朝。以下「報ステ」)や「Nステ」の比較的批判的視点を持った傾向。それから「23」の視点。そのへんは番組の路線としてはそんなに大きく変わっていない。ただ、全体としては萎縮してきている。歯に衣着せぬような報道はだんだん少なくなってきている。
 特に安倍政権になってからのNHK。そNHKだけじゃなく、ニュース報道の忖度の傾向が強まった。そういう傾向は感じます。
 最近、僕らの中で話題になっているのは、「報ステ」は今年7月くらいから少し路線が変わってきているんじゃないか、という点。少なくとも、僕は今、路線が変わったと決めつけることまではしていない。ただ、確かに芸能やスポーツの割合が増えてきて、政治的に敏感な問題についての対応の仕方が鈍いんじゃないかなと感じる。今の報道の萎縮ぶり、忖度ぶりの一つの象徴じゃないかと思い、注目して見ています。
 NHKに関しては「一貫して政権寄り報道というのがあったんだな」というのは、OBになって、報道番組を抽出するようになって、すごく感じます。振り返ってみれば、僕らが現役だった頃にもそれはあったんじゃないか。それが強まっている感じは受けています。

戸崎 これは非常に大きな質問。私たちが20年近くモニター活動をやってきて、その間にニュース自体がどういうふうに大きく変わったかという視点は少し弱かったような気がします。
 モニター活動は20回やって、報告書を作っています。その内容をもう一度精査して、どういう変化が起こっているかをあらためて考えてみないといけない。
 特にNHKの場合は安倍政権になってから、「安倍チャンネル」と批判されるような事態が強まっている。国谷裕子キャスターを降板させたり、岸井成格さんを辞めさせたりする動きと、現在のやや萎縮したといわれる報道姿勢が無関係ではないと思っています。
 ただ、中には反骨精神を持ってちゃんとした報道をしている人もいるわけで。一概に一定の傾向があると概括的に言うことは非常に難しい。番組によって違いますから、そこは細かく見ていかないといけない。しかし、たくさんの安倍政権にひれ伏すメディアや本が出ていますが、それらを見ると、ジャーナリズムの劣化は感じられるんじゃないか。
 それから、もう一つの質問。これも大きな質問です。いつ頃、何が転機で変わってきているのか、ということですね。
 これも答えられない。私の個人的な見方ですけども。2001年に「ETV2001」(NHK教育)という番組の戦時性暴力に関する番組が大きく改竄された事件がありました。このときは官房副長官だった安倍晋三氏が圧力をかけたということになっておりまして。それをもたらしたのは、現在閣僚にたくさん入っている若手政治家。「若手議員の会」というのが当時ありまして。教科書に対して、慰安婦の記述に対して攻撃を非常にかけてきた。教科書からそれを一掃するということをやったわけです。
 その時期に非常に強まったのが右翼的、国粋主義的傾向。安倍氏の干渉によって番組がズタズタになった2001年以降、戦争責任に関する番組はNHKの中から消えてしまいました。去年、731部隊を扱った番組はありましたが、慰安婦に関する番組は一切作られていない。
 そういう形で、その時期を境にして、日本の加害責任の問題といったことが大きく取り上げられなくなった。これは一つの境目ではなかったかと思います。その点で意見が違う方はいるかもしれませんが、私は大きかったんではないかと思います。
 重要なことは単に政治家が圧力をかけているという構図ではありません。今の内閣は「日本会議内閣」。近年の非常に重要な傾向としては、民衆がNHKに対して圧力をかけているんです。われわれ視聴者団体もNHKに「ちゃんとしろ」ということは言います。でも、「なぜ、安倍政権を批判するのか」「反日放送局だ」という批判はいっぱいあるわけです。
 そういう点で言うと、今や民衆が非常に右翼的な形で組織されていて、ジャーナリストを脅迫する。殺人予告までするという時代になってきている。これは恐らく20年くらい前まではなかった。安倍政権によって励まされているというか、震源地が安倍政権であるという言い方もできると思います。そういうことが今、非常に強まっています。モニター活動をやる上でも、そこを見ていかないといけないんじゃないか。

府川 大所高所じゃないんですけど。私たちがモニターをやっていて感じることは、一つは局によって傾向が違うこと。ここ数年、特にはっきりしてきている。具体的に言うと、「NHKvs.テレ朝、TBS」という構図です。極端な話、私たちの間では「3つの局をモニターすれば、全体がわかってしまう」という言い方をする向きもある。あとの日テレ、フジはニュースに関して『鳴かず飛ばず』の傾向がある。決めつけてはいけないんですけど。
 もう一つは同じ局、例えばTBSでも、この頃はいろんな報道番組をやってますから。本当は朝から晩まできちんとその局の番組を系統的にやらないと、その局の色というか、思想というか、それはわからない。そこまで来ているのかな、という気がする。
 例えば、TBS。「ひるおび!」という結構長い番組をやってますね。あれに出てくる人たちは例えば、政治で言えば、元時事通信特別解説委員の田崎史郎さんが出てくるとか、そういう形を取っています。それは「SM」なんかとは明らかに傾向が違う。それが一つの局で運営されているということにわれわれは目を止めなきゃいけない。
 ご質問の趣旨にはお答えできていないかもしれませんが、私の感想として、そう思っています。

揖斐 ナンセンスな質問になるかもしれませんが、「この番組はバランスが取れているから見たほうがいい」とか。好き嫌いにも関わるんでしょうけど、「見るべきニュース番組」と「これはいかがなものか」と思われているものがあれば。われわれ視聴者と比べると、かなり鋭い視点でご覧になっているので、はっきり言ってもらえる部分があれば聞きたい。

小滝 そんなに全般的なことは言えませんけど、今度のモニター活動をやっていて、僕が感じたのは、ウィークリー番組の「報特」は米朝会談について非常に多角的で精力的な取材をしていて、いい番組だった。いろいろな意見が出てくるという意味では、ニュースとは違いますけど、「SM」の議論が参考になる。
 それから、意外に思ったのが、デイリーの「羽鳥MS」。これは報告書の表を見ていただくとわかるんですけど、米朝会談について抜群の時間をかけている。報告書の一番ラストの表を見ていただいて、放送時間の比較をしていただくと、すぐわかる。非常に力を入れて議論していました。
 ただ、ワイドショーに特有なこととして、例えば、泊まるホテルのこととか、金正恩の手紙の大きさとか、非常に派生的な問題に時間を割いていたというところがある。そういうものを交えながら、コメンテーターの議論は今のメディアではないような踏み込んだものだった。
 在韓米軍の撤退の問題、日本の安保体制の問題にも引きつけて考えなくちゃいけないんじゃないかというところまで踏み込んで議論していたのは、どうも「羽鳥MS」だけじゃないか。
 デイリーのニュースで言うと、いつもはさっき言っていたように、「NHKvs.テレ朝、TBS」。要するに「報ステ」「23」は結構対抗的に見えるんですけども。今回の米朝会談に関して言えば、「報ステ」は比較的、歴史的な視点や肯定的な面をきちんと見ていましたが、「23」は何か「NW9」とあまり変わらないような会談に対する否定的な見方が強かったような気がしました。
 モニター活動をやっていると、そんなことが少し見えてくるかなという意味では非常に面白かった経験です。

戸崎 先ほどの質問は「どの番組を推薦するか」ということだと思うんですけど。「報特」は推薦に値する番組。「SM」も議論が非常に参考になる番組だと思います。ただ、好き嫌いで見るんじゃなくて、できれば、批判するためにニュースを見ていただきたい。
 私たちが視聴者団体のメンバーと話をすると、「NHKのニュースは腹が立つから見ない」という人が結構多いんですね。「それはやめてください。ちゃんと見てください」と私は言うんですけど。見ないと批判できない。
 だから、最低でも民放とNHKの番組を両方見て。新聞も読んで。比較していただくことが、特にジャーナリストの方だけでなく、一般視聴者の方にも呼び掛けていたい。
 そうしないと、例えば、翁長雄志全沖縄知事の葬儀で菅義偉官房長官に罵声が飛んだんです。「帰れ」とか「何しに来たんだ」といった声が飛んだ。これは民放のニュースではやりました。NHKはその音声を消していました。
 これはかなり前のことですけど、沖縄の全戦没者追悼式。毎年6月23日に行われています。安倍首相が行ったときに、「あなたに基地問題を語る資格はない」と大声で叫んだ老人がいました。一国の首相が訪問したときに、市民の側から声が飛んだ。これだけでもニュースになるんですよ。ところが、この野次というか抗議の声はNHKの生中継の中では聞こえなかった。「報特」はその老人を捕まえてインタビューをしているんです、その週に。この姿勢の違いは両方見てみないとわからない。だから、「NHKは気に入らないから見ない」ということになると、ますます変わらない。「それはやめてください」と私は言っています。
 聞いた話だと、「SM」の放送が始まると同時に猛烈な抗議の電話がかかってくる。メールが来る。TBSの前ではかつて右翼のデモ行進があった。
 そういう中で「言いたいことを言う」という報道をしているニュースの担当者がいるわけですね。「報特」もそうですし、恐らく「SM」もそうでしょう。そういう人たちが孤立して闘う、孤立して仕事をすることがないように、「この指摘はよかった」「この放送はよかった」というような声が非常な嵐の中で闘っているニュースの担当者を励ますことになる。
 そういう点では、「推薦されたニュース番組を見よう」というだけではなくて、そこから今、さらに一歩進んだ行動が視聴者の中に、あるいはジャーナリストの中に欲しい。それは特に今、猛烈なネトウヨの攻撃の中に良心的なニュース番組が晒されているという時代には、ますます切実になってきているんじゃないか。

フリージャーナリスト伊藤昭一 先ほどから、これだけを絞って見ているから、こういう問題として捉えられるんですけど。実際上はバラエティー化しているわけですね。こっちはニュースを知りたいのに、何かそういうものをやらないわけですよね。別に私は知りたくないんだというふうに思っても、それはやらない。先ほど、NHKのそういうのを見ていた人も、恐らくそういう面が非常にあって。娯楽としてですね、ニュースを見るという態度と、ニュースはニュースとしてきちんと報道するという態度をもう少し放送局というのは明確にすべきではないかというふうに思うんですよね。先ほどの田崎さんのあれも、まあ、聞いてみれば、バラエティーとはいえ、「ああ、自民党の考え方はこうなんだな」と、彼はよくそれで説明していると思うんですよ。現政権の立場というものを。それなりに言い分はありますから。問題なのは、やっぱし、バラエティーは楽しいものであると。面白くなければならないというふうにしてやっておきながら、先ほどおっしゃった沖縄の民衆から官房長官に対する抗議の声やそういうものを操作するというようなことの明確な指摘というものがちょっと足りないんじゃないかと思うんですけど。私、ちょっとこういうモニターする会があるのを知らなかったものですから。そういうのがあるのならば、かつてのイラク戦争や、始まった当時から見て、現代はバラエティー化というのは僕は悪くなって進んでいると思うんですけど、そのへんの問題意識はどのように持たれているんでしょうか。

戸崎 「会」は一般的なテレビのモニターをしていって、バラエティー番組にまでは責任を持てないなという感じがしますけど。結局どういうことなんですかね。私たちはニュースに注目していますので、バラエティーにまで批判をしたことがあまりないんですけど。バラエティーが多過ぎるという問題意識はもちろんあると思いますけど、それは若い人たちもそうなんでしょうかね。結構楽しんで皆さん見ているんじゃないでしょうか。
 だから、あながちバラエティーかしたものが悪いということではないだろうと。つまり、民法の場合は視聴率が営業に直結してますから。だから、視聴率が上がらないと、放送時間枠が高く売れないという仕掛けがありますから。そうなるのは民間放送、テレビが持っている宿命というか、必要なことですから。あながち私たちがそれを「駄目だ」とは言えない。正したければ、見なければいいということですね。視聴率を下げればいいということではないでしょうか。今のようなご質問があると混乱しますね。

府川 今おっしゃったのは、「ニュース番組がバラエティー化している」ということですね。私はそうとも考えていない。われわれがモニターしているニュース番組はきちんとしたもので、バラエティー化されてませんね。だから、むしろバラエティー化されているのは、昼の時間帯の「ニュースショー」と称しながら、いろいろなものが入ってくる番組。そういう部分ではそうなっているかもしれませんけど。われわれは今のところ、その部分は省いてモニターしています。そのへんは私はそんなに危惧していません。

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