【声明】「言論・報道の自由」に対する政権党の無理解を憂慮する

2015年7月16日
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 自民党の保守系若手・中堅議員の勉強会(文化芸術懇話会)での発言が大きな社会問題となり、民放連や日本新聞協会、日本記者クラブなどから相次いで抗議の声明が出された。その後、発言した議員が党から処分を受け、安倍晋三首相も党総裁として謝罪をしたが、一連の出来事は民主主義社会の根幹に関わる極めて重要な問題だ。
 
公益社団法人自由報道協会は、改めて問題点を整理するとともに、今回の事態に対する深い憂慮の念を表明する。
 
勉強会は先月25日、自民党本部内で行われた。私的な勉強会といいながら、事前に、自民党担当の記者でつくる「平河クラブ」に告知され、会の冒頭を取材させている。
 
私たちが問題とする発言は以下の通りだ。
 
・「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのがいちばん。政治家には言えない、ましてや安倍総理にも言えないことなので、文化人、民間から経団連に働きかけてほしい」
・「青年会議所理事長のときにマスコミを叩いたことがある。(その経験から)スポンサーにならないことがいちばんこたえることがわかった」
・「青年会議所も経団連も商工会議所も、子どもたちに悪影響を与えている番組ワースト10を発表して、広告を出している企業を列挙すべきだ」
・「沖縄の歪んだ世論を正しい方向に持っていくために、どのようなアクションを起こすか。(沖縄のメディアは)左翼勢力に完全に乗っ取られている」
 
いずれも、参加した国会議員の発言として報道された。これを受け、当日の講師に呼ばれた作家が次のように発言した。
 
・「本当に沖縄のふたつの新聞(沖縄タイムス、琉球新報)は絶対つぶさなあかん」
 
「言論・報道の自由」に資する活動をする私たちにとって、これがどれだけ問題なのかを次に解説する。
 
まず、「言論の自由」は憲法で保障されているものであり、自民党議員の発言は憲法をないがしろにするものだとの批判があるが、それだけではない。人はそれぞれに違った意見を持つ存在だ。それぞれの意見と、意見を言う人の存在を互いに認め合い、議論を通じてコンセンサスを形成し、物事を進めていくのが民主主義の原点だ。
 
そのため、人にはさまざまな言論に接する自由があり、自由にモノが言えることが保障されていなければならない。意見の違う人の存在を認め、意見の違う人が意見を言う機会を奪ってはならない。その代わり、意見と意見を戦わせる自由は無制限に保障される。意見の違う人の意見を批判するのは自由だし、批判してきた意見を批判し返すのも、もちろん自由だ。
 
重要なので繰り返すが、人はそれぞれに意見が違う。その意見が違う人の存在を認め、違う意見を言い合う機会を保障するのが民主主義社会の鉄則だ。
 
付け加えれば、企業がどこに広告を出すかは(何にどれだけ支出をするかは)100%、それぞれの企業の裁量で決められなければならない。自由主義経済の大原則だ。
 
これが、旧社会主義や共産主義、全体主義、独裁主義国家とは違う、自由で民主的な国家の根幹をなす価値観だ。だからこそ、憲法にも明記されているのである。今回の一部自民党議員の発言は、こうした民主国家の重要な価値を否定するものだった。
 
議員は、異なる意見のメディアを「叩く」「懲らしめる」などと言っている。沖縄の世論は「歪んでいる」「間違っている」と言っている。多様な言論を否定する発言だ。作家はさらに一歩踏み込み「つぶさなあかん」とまで言った。これは異なる意見の人の存在否定だ。しかも広告出稿に圧力をかけるというのは、自由主義経済の否定でもある。これが、政権党の会合で飛び出したのだ。極めて深刻な事態と言わざるを得ない。
 
にもかかわらず、自民党幹部の反応は鈍かった。
 
谷垣禎一幹事長は2日後に「報道や言論の自由を軽視し、国民の信頼を損なうもので看過できない」として関係議員の処分を決めたが、その前日の記者会見では「メディアに対して批判・反論することは当然あっていい。ただ、その主張のしかたにも品位が必要だ」などと述べていた。党総裁の安倍首相は、当初は「事実とすれば大変遺憾だ」と言いながら、「党の正式な会合ではない」「発言した人に代わってお詫びすることはできない」とも語っていた。事態の重要性を認識し、正式な謝罪をするまでに8日もかかった。また、処分を受けた議員の一人が数日後、「(自分の発言は)問題があったとは思わない」と言い、再び処分されるということもあった。
 
「言論・報道の自由」は戦後の日本政治の先達たちが党派を超えて守り育んできた大切な価値だ。政権を担う政党の議員はもちろん、すべての政治家は、そのことをいま一度、肝に銘じてほしいと願う。私たち公益社団法人自由報道協会は、「言論・報道の自由」を擁護することを改めて強く表明する。
 

以上

 
2015年7月16日

公益社団法人自由報道協会